財産債務明細書の提出を義務付けたりして資産状況の管理を行っていましたが、
このところ国税当局は富裕層への課税強化に本気で乗り出してきたようです。
特に重点的に管理すべき「超富裕層」とその関連法人については、「重点管理富裕層」
として、その海外取引や相続対策等による資産の移動等についても中長期的に管理・
把握をしてくということだそうです。
重点管理富裕層に指定されると、それらは「課税上の問題が想定され調査企画の着手が
相当と認められる者」「課税上の問題は顕在化しないが多額の保有資産の移動が見受け
られるなど継続的な注視が必要と認められる者」「課税上の問題等は現在見られないが
経過観察が妥当と認められる者」と3つのカテゴリーに区分され、すべての富裕層がすぐに
調査ということにはならないものの、調査対象となった場合、通常の税務調査よりもさらに
踏み込んだ調査が行われるようです。
では、この「超富裕層」とよばれる大口資産家は、どのように選定されるのでしょうか?
国税庁は、その選定基準については正確な事実の把握を困難にする恐れがあることから
非公開としていますが、9月3日付の日本経済新聞によると、複数の国税OBらに取材した
結果、次の10個の選定基準が判明したとのことでした。
①有価証券の年間配当4000万円以上
②所有株式800万株以上
③貸金の貸付元本1億円以上
④貸家などの不動産所得1億円以上
⑤所得合計額が1億円以上
⑥譲渡所得及び山林所得の収入金額10億円以上
⑦取得資産4億円以上
⑧相続の取得資産5億円以上
⑨非上場株式の譲渡収入10億円以上、または上場株式の譲渡所得1億円以上かつ45歳以上のもの
⑩継続的または大口の海外取引があるもの、または①~⑨の該当者で海外取引があるもの
これだけを見ると通常の確定申告等ではあまりお目にかかる数字ではなく、ピンと来ませんが、
あくまで超富裕層の多い東京を前提としたものであるらしく、地方に行けばそのラインも
必然的に下がってくるとのことで、そうなるとすべてが他人事でもなくなってくるのではない
でしょうか。
上記に該当する大口資産家については税務署ごとに調査ファイルが作成されており、
資産状況や資金の流れが厳密に管理されているとのことです。
今後は、事業承継、自社株対策等を行うにあたっても、今まで以上に常に「国税の影」を意識
せざるを得ないこととなりそうです。
埼玉本部 菅 琢嗣
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