厄介な問題の一つであります。
というのも会社の株主構成や相続贈与等の状況によって評価方法が全く変わってしまうことも
有り得るからです。
その典型的な評価方法に配当還元評価方式という評価方法があります。
その詳細は割愛しますが、要はその株式を手にしても持ち株割合(厳密にいうと議決権割合)が
低く会社経営に影響を及ぼすこともなく、ただ配当を得ることしか目的がない場合に通常の評価と
比べて低く評価されるというものです。
相続税や贈与税の税額を算定するにあたり税額を低く抑えることができるという意味において
とても有利な評価方法なのですが、ここで気をつけなくてはならないことの一つに「種類株式」の
存在があります。
持ち株割合を判定するためには、その「持ち株数」の割合で判定するのではなく「議決権数」の
割合で判定することとなります。
昨今の会社法においては、株主によって会社支配が目的の株主もいれば、配当が目的の株主も
いるという状況を鑑みて、同じ株式であっても議決権数に差をつけるということがよくあります。
同じ1株であっても配当を優先する場合は議決権がゼロのこともあるし、配当よりも会社経営に
重大な影響を及ぼしたい場合は、1株の議決権数が10だったり100だったりすることも考えられます。
そうなったときに持ち株数でその割合を判定してしまうと、評価額が通常低い配当還元方式だと
思ったものが、実は原則的評価方式だったということも十分にありえることなのでくれぐれも
気を付けたいところです。
種類株式には「拒否権付株式」俗に言う「黄金株」というものもあります。
これは株主総会の決議のほか、拒否権付株式の株主で構成する種類株主総会において
会社の決定事項である取締役、代表取締役の選任、解任のほか事業譲渡、合併、解散と
いったものを拒否する権限をもった株式であり、とても強大な権限を持った株式です。
最近よく耳にする某国大統領が発令する「大統領令」と何となく似ていると思ったのは私だけでは
ないのではないでしょうか。
ここで一つ注意が必要なこととして、種類株式の発行にあたっては一度現在発行されている株式を
会社が回収し種類株式として同数株式を再び付与することとなり、その時に取得原価から時価にて
譲渡があったということで時価が取得原価以上の場合、譲渡所得が発生することとなりますので、
くれぐれも気を付けたいところです。
埼玉本部 菅 琢嗣
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