持株会社とは、具体的な事業活動を行わずに他の会社を管理・指導する会社です。
最近では、上場企業の多くで〇〇ホールディングスといった社名が聞かれます。
では、なにゆえ持株会社(ホールディングカンパニー)を設立するのでしょうか?
上場企業で持株会社が広く活用されていることには以下の点があると考えられます。
1.持株会社の下に各事業会社を紐付けるため、各事業会社の業績把握が容易である。
2.事業会社の下に事業会社を紐付ける場合には、親子会社間の軋轢や摩擦が生じやすい。
その点、持株会社は事業会社ではないので、こうした軋轢等の心配が少ない。
3.損害賠償請求やその他の企業リスクを分散・遮断することができる。
上記のようなメリットを考えると中小・零細企業にとっては持株会社を設立する意義が
あまりないようにも思われます。
しかし、以下の理由から中小企業でも持株会社を設立するメリットは大いにあります。
理由は以下のとおりです。
1.相続税の節税メリット(資産の含み益に対する法人税等相当額38%控除)
①オーナー ⇒ A社の場合
A社の利益及び純資産額(時価)を基準にA社株式が評価される。
②オーナー ⇒ H社 ⇒ A社の場合
H社の利益及び純資産額(時価)を基準にH社株式が評価される。
H社が保有するA社株式について含み益がある場合は、上記の法人税等相当額38%を
控除することが出来る。
H社(持株会社)を設立した当初は、A社(事業会社)とH社の株式評価は同一となり
節税効果はありません。
設立後、長期間にわたってA社が高い収益をあげることによるA社株式の含み益に
対して38%が控除され、節税になります。
上記法人税等相当額38%の控除についてですが、「法人の含み益が顕在化するのは
売却した時であり、売却した時には実効税率分の税負担がある。ゆえに税負担分は
控除する」という内容です。
2.事業承継対策としてのメリット
複数法人を所有している場合に、会社ごとに株式を後継者へ移転していくことになります。
一方、持株会社を設立すれば、当該持株会社株式を移転させるのみで足ります。
但し、承継させたい親族が複数いる場合には持株会社化していることがかえって
煩わしくなってしまうこともありますので、ご注意ください。
ちなみに、持株会社を設立するためには以下の手法が考えられます。
①株式交換による方法(既存法人を持株会社にする方法)
既存法人株式の全部を他の株式会社に取得させる手法
②株式移転による方法(新設法人を持株会社にする方法)
既存法人株式の全部を新設法人に取得させる手法
なお、上記の株式交換や株式移転を行う場合には、税制適格要件があり、
当該要件を満たす場合には簿価引き継ぎ、満たさない場合には時価引き継ぎ
(税制非適格)となります。
税制非適格とみなされる場合には、含み損益に対する課税が発生するため
注意が必要です(ただし、100%グループ内組織再編であればグループ法人税制により
課税が繰り延べられます)。
茨城本部 楢原英治
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